敗戦/グロタン
 
昔、女は美しかった。
そして美しさを自らは知らなかった。
知らなくとも美しいということは
幸せなことであろうに。

ある日、天から新しい女が降ってきた、
男どもはすっかりその女に酔ってしまった。

その女が「強い人が好き」と言うので
男たちは互いに競い合った。
その女はきらびやかな服を好んだので
古い女たちもそれを真似した。
そしてその女は子供たちに「人に騙される前に
人を騙しなさい」と教えた。

この女はここに新しい世界を築こうというのだ、
男のリーダーがそれを牽引した、
その志は少しずつすり込まれていった。

今、四季の島の人々は古い世界も守れず
新しい世界も築けず息苦しさに窒息している。

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