風人間/服部 剛
 
駅の切符売場で
僕が地面に置いた、紙袋を
風を切って
倒していった幼い少年は
くるり、振り向き
「ママ切符買ってみる!」
「あら、横からすみません…」

一歩後ろに下がった、僕は
少々ほほえましく思う
(まぁ子どもだからしゃあないな…)

大人になってやったら、困るけど
(でも、待てよ)  

大人になった僕等は
日々の「理由づけ」で
いつのまに脳の思考が
凍(こお)っているかもしれないなぁ

ほんとうに<ここぞ>のときは童心で
目的地へ一直線――もアリである

古(いにしえ)からの便りによりますと…
かの宮沢賢治さんも
時折は
(誰かを思いやるあまり)
熱いハートの高鳴りで
一陣の風そのものになり
「日々の場面」を切り裂いてゆきました  

おぉやばい、踏切がかんかん鳴り出した
券売機に小銭を入れて、切符を買おう  





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