美味しい記憶/
梓ゆい
作りたての甘酒が美味しくて
ふうふう。しながら夢中で飲んだ冬休み。
早くおかわりがしたくて
ようやく席に着いた父に
「もう一杯ちょうだい。」と
私はねだる。
少し困ったような父の顔からは
くしゃりと笑みがこぼれて
今度は少し大きめの湯飲みで
急かしてねだる私に
もう一杯の甘酒を差し出す。
大さじ2杯分の砂糖よりも甘い
女の子の父親の子煩悩。
二人向かい合うテーブルは
赤々と燃える石油ストーブよりも暖かい。
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