はさみ/水菜
 
「瑠璃子、鋏を取ってくれないか?」
そう言って、祥太郎は、白い、青白く血管が浮き出ている手を差し出した。傷付いたことの無かった筈の滑らかな皮膚が、テラテラと脂汗で光っている。
瑠璃子の視線の先には、裂けてしまった傷口と、白い包帯。
目を背けながら、瑠璃子は滑らかな手触りの銀色の鋏を祥太郎に手渡す。
カタカタと震えながら、案外その様子を冷静に観察している瑠璃子。そんな自分に気づいた瑠璃子は皮肉に思い視線を揺らす。

瑠璃子は、戸惑いながらも外の様子を、落ち着きなく探る。
人の関係は、鋏のようだと、瑠璃子は思う。
鋭く切れる鋏も、錆びついて切れない鋏も。
瑠璃子の中では、それは延長し
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