しろいまぼろし/水菜
 
ふいに、とつぜんに
真っ白になったというのか
吹雪にふかれたように、というのか
巻き込まれたように、というのか

ふいに、見失った

大事なものだった気がするのだけれども
それがどんなものだったのか
それがどんな形のものだったのか

そういった事柄が、ふいにどうでもよくなったのだ

ことばがおいていかれる、そのような感覚ともちがう
あえていうなら、感覚がおいていかれたのだ

あのしろい吹雪のむこうに

雪遊びをしている子供がいる
大きな雪玉を仲よくつくっている
少し先には、その子達の飼い犬なのだろうか
もふもふと雪に鼻をつっこみ顔中を真っ白の雪に覆わせてい
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