かけるくんの空/深水遊脚
 
はなかった
みんなよりも空が好きで猫のカフェラテが好きで
それを隠すことを知らないだけだった
喋らないというだけで遊ぶことはみんなと一緒だった
誰かがいじめようとすることはよくある
でもほかの誰かがそれに乗らなかったり
ときにはかけるくんを庇ったりした
なによりかけるくんが敏感に察して
いつのまにかいなくなってしまっていた
かけるくんは言葉から自由だった



理恵先生の呼ぶ声にかけるくんが元気に

はい
と答えた

みんなびっくりした
その日以来かけるくんは人気者になった
言葉から自由になり
そのうえで自由に言葉を操れる人気者のかけるくん
空よりもみんなが好きになったけれど
空の色や雲のかたちのことを
だんだんと忘れていった
そしていつのまにか
カフェラテはもうここに来なくなった
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