INSPIRE/ただのみきや
 
が一斉に湧き立つ日
柘榴のような
狂いは目覚め
あなたは何と呼ぶだろう
言葉は目隠しをしたまま追いかけた
躓く石のない童話の街を
――唐突の不協和音
天然に曲がったナイフが
左目の裏側から滑り込んで抉るように
乖離させた
からだとこころ
理想と現実
自分と自分
あなたは何と呼ぶだろう
終わらないと思ったものが過ぎ去る時の
見交わす顔の空白を
思い起こそうとしてただ
鳥のように素早く
旋律は去る
朦朧とした
霧の森へ
消え


音(オン)


荒地を
彷徨う影
弦のない
ギターはあの柴のよう
炎の歌を永続させる静けさの中に
欹てる者が靴を脱ぐ時
語る声は火の文字
去ることはない
去るのはただ
わたしたち
感覚の揺らぎとして




               《INSPIRE:2017年1月14日》








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