INSPIRE/ただのみきや
ギター
雨をはじいて飛ぶ鳥のように
空気を震わせて濁らない
濡れた枝先の微かな光
抜糸された瞳へ飛び降りる
孵しそこねた夢の欠片から
うなじのほくろふたつ
振り向くことのない永遠が
月のような傷痕を生まれる前に遡らせる
爪弾く音
見送る軌跡
わたしたちが求めたものは終わらない楽曲
ではなく 満ち足りた死
沈黙へ還って往く
音(オン)
としての
波形を緩やかに
失いながら
こと切れた微笑みの残り香のように
ただ白紙の中にだけわたしたちは在って
沈黙から沈黙へ
巡り
ながら
奏でる風の断章
揺らぎとして
響き合い互いを呼び起こし
やがて花々が一
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