わたしたちの庭/伊藤 大樹
日常から
肌、離陸して
死を忘れている一瞬
匂い立つ樹木
おろかなのは おそろしいが
みじめではない
たぶん
半分まで橋を渡って
そこで橋がとぎれていることに気づく
雨さえ降らない夜に
温かいスープはないが
まだわずかに
愛する余地は残されている
霜を踏みしめ
足早に階段を駆け上がった
新鮮な野菜のように
日々は白く透き徹って
じっと見凝める
(あれがきっとわたしたちの
ささやかな庭だったね──)
愛するのは おろかだが
みじめではない
決して みじめではない
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