彼との淡い思い出に。/ヒヤシンス
 

 どうやら僕はセピア色の中に生きている。
 独りの時くらい弱音を吐いても良いだろう?
 彼はきっと優しく微笑んでいる。

 原色の心の状態に疲れた僕は港の公園に行く。
 そこには緑の木々がいる。花達も咲いている。
 優しく微笑む人達がいる。
 彼らに嘘は無く、力強く生きている。

 彼らが僕の原色を優しさで包んでくれる。
 港を行き交う客船が風に潤んでいる。
 その時ベンチに腰掛けた僕にも風が吹いた。
 きっと彼が僕に風を寄越したんだ。
 どうだい、僕の心の色彩も少しは淡くなっただろう?

 それならば、

 風の奏でる色彩はいつも淡色。
 僕の奏でる色彩もきっと淡色。
 
 
戻る   Point(7)