森のロンド/
塔野夏子
る透明な精霊たち……
ふいにひとしきり風が強まり
彼の中の森がほとばしる
樹々のざわめき 高まる瀬音
狂おしく舞う彼の肢体
――闇も 傷も
抱えたままでかまわない
そこから生まれいでたものが
やがて幾重にも枝を広げ
ひかりをいっぱいに受けとめるから
そしてまた風はやわらぎ
きらめきをこぼしながら
鳥たちが囀る
彼の物語の
はじまりつづけるはじまりと
終わりつづける終わりとが
いつしかうつくしい環になって
森のまわりを静かにめぐる
戻る
編
削
Point
(7)