森のロンド/塔野夏子
 
る透明な精霊たち……

ふいにひとしきり風が強まり
彼の中の森がほとばしる
樹々のざわめき 高まる瀬音
狂おしく舞う彼の肢体

――闇も 傷も
抱えたままでかまわない
そこから生まれいでたものが
やがて幾重にも枝を広げ
ひかりをいっぱいに受けとめるから

そしてまた風はやわらぎ
きらめきをこぼしながら
鳥たちが囀る
彼の物語の
はじまりつづけるはじまりと
終わりつづける終わりとが
いつしかうつくしい環になって
森のまわりを静かにめぐる



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