森のロンド/塔野夏子
 
燦 とひかりが降り
彼の中の森がめざめる
その肢体が
若枝であり
清流であり
薫風である彼の中の森が
その数多の瞳を
つぎつぎとひらいてゆく

きらめきをこぼしながら
鳥たちが飛びたつ
彼の中の森がにじみ出す
森のめざめに応えて
舞いはじめた彼の肢体から

樹々の葉たちは緑の音符
舞う彼の想いを奏でてゆく
樹々の間を縫うせせらぎも 風も
彼の記憶を 予感を
そのあわいから生まれる物語を
言葉のない歌で紡いでゆく

彼の中の森があふれ出す
燦 とひかりが走る
樹々の葉と せせらぎと 風と
たわむれからみあいながら

霧や虹の衣をまとい 交錯する透
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