長靴/
草野春心
眼窩から此方側へ延びている廊下に沿い
雨に濡れた数人の男たちがワツワツ歩いていく
それほど速くもないしそれほど遅くもない
私は三和土に置かれた長靴を先刻から見ている
意識に粘着した虚しさの塊を見る時のように
見るということの内部まで見る時のように
或は解けていた歳月が褐色の光に浸され
やがて糸球状に凝固していくのを
見ている
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