黒い歩道/水菜
小さい頃に手を繋いで歩いたあの歩道は、いつの間にか立ち入り禁止になっていた。
立ち入り禁止の表示とチェーンが張られたその一角に、子猫が3匹かたまって此方をじっと見つめている。この道の先には、古い洋館が、あったはずだった。私は、そこの洋館のやさしい物腰の家族が好きだった。ぜんそくもちだった私は、この道の少し先の木陰で、喘息の発作を起こして、蹲っていたのだった。私に声を掛けてくれたのは、ステッキを引きずった、老人だった。その老人は少し眉をしかめると、私にごつごつした手を差し出した。掌の中には、甘いミルクのキャンディが2つ入っていた。私は首を振ったが、老人は、私の手をきゅっと握ってキャンディを渡すと、
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