冬のハリネズミは 、/末下りょう
ことなんて一度も
なんて まだ
一度も
紫はゆっくりと近づいてきていつのまにか消えているものすべて
黒い笑いのような蝶たちが
夜の果てからの風にゆれてる
踏まれたばかりの翅 落ちたハンカチーフ
水路のうえの凍える道路をたどり
冬の祭りに はいでたときかいだ
低い太陽の匂い
クッカクッカと
霜まみれでころがる空き瓶の底
泥の光沢の
そこにたまる透明さ ストリートビュー
ネズミは忘れないだろか
よく肥えたイナゴを食べてきみと生きた日々や
季節はずれの毛並みに きらめきながら積もった雪の匂いを
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