父が書いた詩/岡部淳太郎
数年前、引越しの際に荷物を整理していたら、和室の天袋の中から、昔父が書いた詩の原稿が出てきた。以前から、僕の父親は若い頃に詩を書いていたらしいと、聞いてはいた。だが、僕の知る父の姿からは詩を書くことなどを想像することは出来ず、僕は半信半疑だった。
僕は詩人としての父の姿がかつては確かに存在したのだということを知ったのだが、実際に原稿を手に取ってみても、それが果たして本当に父が書いたものなのか、それとも誰かの詩を書き写しただけのものなのか、判断出来ずにいた。というのも、原稿に署名はなく、ただ表題と中身が書かれているだけで、同時に出てきた別の紙片には、戦前から戦後にかけて活躍した詩人、丸山薫の詩
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