冬という病/ただのみきや
した男そのままの
書きとめる指先は氷点で壊疽したが
歌は速かった
いつものように
いつもより一層
持って往かれた
時間よりも風に
巻き戻される季節の祭儀
一枚の絵から水が溢れ――
貪る視線
鏡に浮かんだ梢の先をつかみ損ね溺れて往く
冬はあなたの美しい病
白樺の根元に埋められた翡翠(かわせみ)の死
隠匿された夏 夢のまにまに問う
日差しと影に縁取られた抽象の疼き
あなたを羽化させる
葬列を飾る風花は
架空の唇に触れて溶ける冷やかな赤い贄に
――そうして自らの断面にすが入っているのを見る
真の喪失とは気づかないもの
《冬という病:2016年12月31日》
戻る 編 削 Point(21)