冬という病/ただのみきや
 
      祈りと願いに摩耗した
己の偶像が神秘の面持ちを失くす頃
始めて冬の野へ迷い出た子猫は瞳を糸屑にして
柔らかくたわみながら落下する鳥を追った
薄く濁った空をゆっくりと
    螺旋は傾き
        きりきりと 
            届かない痛点へ

 波が波を打ち消す忘却の連鎖
   無垢な残酷さ


    ひとひらの炎があった
  伸縮を繰り返し
切れ端であり全体の
なにも燃やさず
 なににもよらず燃え続ける
   純粋な幻が
       現実とはその踊る影


         胸中に陽だまりと氷
         凍死した
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