扉/塔野夏子
 


     *

私は扉のこちら側にいて
私に与えられた世界を
できるだけ深く呼吸する
そして私の脆弱な神経が許すかぎりは
扉の向こうの気配も
できるだけ感じとろうとする

     *

その扉が閉ざされていることは
向こう側からの拒絶ではなく
むしろこちら側に身を置いていることに対する
祝福である

ただ閉ざされてあっても
私がそこに扉があると知っていること
それが扉であるということが
静かなひとつの意味である



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