ぬめぬめ/ただのみきや
捨てられた枕木の朽ちた裏側
温かく湿った光の無い世界で
無数のイキモノが暮らしていた
姿は見えないが互いの蠢く気配を感じながら
ある日ひとりのナメクジとひとりのミミズが行き当り
互いの粘膜に触れてしまう
他人の感触は不快なもので
(〜オマエ〜ぬめぬめキモチわるいんだよ〜)
(〜オマエこそあっちいけよ〜ぬるぬるヤロウが〜)
真っ暗闇世のはなし
めっぽう目の悪い者たちのおはなしだ
相手も見えていなければ自分も見えていない
相手のぬるぬるは気になるが
自分のぬめぬめは気にならない
そんな二人のやりとりを黙って聞いていた
ダンゴムシもワラジムシもヤスデもムカデもアリも
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