浸されたピアノ/
伊藤 大樹
雨によって遠ざかる季節を
窓から見やりながら
沈黙の岸辺に
漁火が
祈りのように あかあかと
あかあかと燃える
わたしの骨の一つ一つが
谺して
幸運なわたしたちのために
浸されたピアノの鍵が叩かれる
囁きが沈殿している
わたしたちの庭に
雨は鳴り止まない
世界に雨が滲み込むとき
わたしたちのふぞろいな靴も
ほんの少しだけ濡れるようだ
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