カミングアウト/花形新次
 
てくるのを待った
スッキリして出てきた親父の顔が
一瞬のうちに青ざめるのが分かった
180cm120kg丸刈り無精髭の男が
仁王立ちしていたのだ
「おい、おまえ、さっきはずいぶんと偉そうに
言ってくれたな」
「い、急いでいたもんで」
「はあ、聞こえないよ」
親父はガタガタ震え出した
酒飲んで大きな気になって言った些細なことが
今自分を窮地に追い込んでいる
「取り敢えずホームに降りようか」
俺は親父の肩を抱いてエスカレーターを降りた
親父に逃げたり抵抗したりする気力はない
ホームに降りると
8番線に久里浜駅行きが入って来るところだった
俺が前に並ばせた親父の背中に
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