最後の発明その発光・わたしはかなしかった/初谷むい
 
。ねぎは切って持ってきた。だいじょうぶ。手は切りたくない。というかそういう問題ではない死にたくない。というか勘違いでなければわたしたちはふたりきりで闇鍋をする。闇鍋デートである。楽しいのか。ヒロサキユウゴはなにがしたいのだろうか。どんなものを入れたとして、自分が二分の一食べるのである。迷った末に普通の鍋っぽい素材に加えてこんにゃくゼリーを買ってきた。ヒロサキユウゴが喉を詰まらせて死なないといいが。

ヒロサキユウゴの家に到着する。チャイムを押すと彼がのそりと顔を出す。眉毛が格好いい。「おう」と言われる。すこし、顔が熱くなるように思う。なつかしい冬のようなにおいが彼の部屋の匂いだった。


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