会いたい、会いたい/
もっぷ
こどもであるという無力に圧倒されていた日の秋に
よく仰いだ心ひろやかな樹樹があった
これが のちの涯の具現かと 一つの邂逅
その木立の黄葉のかがやきは確かに詩だった
うつくしく 深刻に明るく寡黙な
確かな一篇の詩だった
風が時に吹き抜けて実際のところ沈黙は破られても
大樹は堂堂と 堂堂と ほがらかに
あたしというちいさな存在との
懐かしい前世
という優しいうそを(故に深刻に
あたしにだけのささやきで)物語ってやまなかった
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