ハーモニカ/天野茂典
眼帯をしている目医者彼岸花しおれるところを花鋏で切る
いつまでも鳴らぬ時計よ深夜ふと台所で君に話しかけたかった
オレンジをできれば本屋の中央に置けばいつかは爆発するか
風のなかカヌーを一艘浮かばせてちょうちん鮟鱇そのあとにつけ
公園の機関車深夜に走りだす止まっていることに疲れちまって
壜の鳴る鬼灯市(ほおずきいち)よいっせいに砕けてしまえ沈黙と測りあえるほど
銅(あかがね)の腐食してゆくさま眺めてる間にドン=キホーテよ
汝は死せり
海蛍ひかるそのとき赤貝のひとつの神話メールでつないで
眼帯をしている目医者彼岸花切り落としたあと静脈ほどく
肌襦袢着ている少女しなやかな柳のように毬をついてる
戻る 編 削 Point(2)