ハーモニカ/天野茂典
 
 


    眼帯をしている目医者彼岸花しおれるところを花鋏で切る

   いつまでも鳴らぬ時計よ深夜ふと台所で君に話しかけたかった

   オレンジをできれば本屋の中央に置けばいつかは爆発するか

   風のなかカヌーを一艘浮かばせてちょうちん鮟鱇そのあとにつけ

   公園の機関車深夜に走りだす止まっていることに疲れちまって

   壜の鳴る鬼灯市(ほおずきいち)よいっせいに砕けてしまえ沈黙と測りあえるほど
     
   銅(あかがね)の腐食してゆくさま眺めてる間にドン=キホーテよ
   汝は死せり
  
   海蛍ひかるそのとき赤貝のひとつの神話メールでつないで

   眼帯をしている目医者彼岸花切り落としたあと静脈ほどく

   肌襦袢着ている少女しなやかな柳のように毬をついてる




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