モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
代は払うから」と言った。言った後で余計なことを言ってしまったと思った。でも真弓は、カプチーノを全部飲んでしまうと、急に気が変わったのか、「切るってどんな感じなの?」と、私の左手首の自傷痕を指して言った。私は、「痛くないよ。それでね、何だか、どうでも良くなるんだ」と答えた。真弓はしばらく黙って、私の傷跡を眺めていて、私が左腕を差し出すと、傷跡をゆっくりと撫でた。』
『今日、少し驚いたことがあった。病院の待合室で、いつものように無駄に長い待ち時間を(それなら予約時間より遅れて行けばいいのだが、遅れれば後回しにされるので、どちらにしろ同じ時間待たなければならない。平均で一時間以上。長いときには三時
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