モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
肺にまで入れる気にはならない。中途半端な私。自己嫌悪にはいつも陥っている。自分の住む場所を簡潔にするのが好きだし、得意だ。思い出は軽い、軽さが好き。いくら自己増殖してもそれは単なる情報に過ぎないから。情報に過ぎないものを物質に変換する場所を私は周到に整備しておくから、思い出に殺されないように。春になったら私はサナギになります。出来れば何も見ずに生きたい。何も持たずに生きたい。なるたけ所属せずに生きたい。


心残りと言うほどのもの、特にない。記憶の穴蔵。見えないことを楽しむ、楽しめない、心臓を止めることの出来る場所、そこで私は名前を捨てて、首から下、あるいは肩から上、を切り落とす。ただ、生
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