モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
何だ? そうだ、定義しろ、定義しろよ」
彼は低く呻くような声を出して、うずくまってしまった。僕は、彼の、几帳面なくらいに四角くシーツが敷かれたベッドに腰掛けていたのだけど、達阿木くんの横顔をよく見るために横になって、枕に左耳を着けた。
達阿木くんは文字通り頭を抱え込んでいて、血色の悪い手の筋がしっかりと髪の毛に絡みついてしまったみたいだった。指の間から飛び出した髪の毛の房は、絶望的なくらい毛先が揃っていなくて、悪い虫が好んで入り込みそうな、べとべとした埃っぽさをまとっていた。
「そう、やってさ、君、いろいろ慣れてるだろ、観察して、僕を、面白いとか、いや、違くて、他にすることが無いんだから
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