モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
さ、お前が仕事して自分の金でギター買ったら、一緒に会ってバンドもしてやるって言ってんじゃん」
「今は?」
「今は無理」
「なんで?」
「お前と話してても無意味だ。ほんと、お前全然変わってない。変わらなさすぎ。俺は市民としてまじめにやってんの」
「だから意味って何? 俺はどんなひととでも、そのひとの仕事がどうだとか、関係ないと思うんだけど。市民って何? 法律を守ってる人のこと? だったら俺も市民だよ」
「うっせー、ニート」
「だから、俺は、その、ひと、そのものが大事だと思ってるの。ニートだとか、例えば、犯罪者でも。音楽の前では平等でしょう。俺は、ひとが好きなの。お前のことも」
「あー
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