モラトリアム・オルタネイト/由比良 倖
 
軽快に躱していた。まるで花火の中を舞う羽虫みたいだ。彼女はピンク色のコントローラーをかちゃかちゃ言わせながら、
「ねえ、宇宙に行きたいとか考えたことない?」
 と、少し調子を落として言った。
「ある。けど具体的に考えたことはないよ」
「そうよね」
 と言ってみやちゃんは、コントローラーを床に投げた。みやちゃんの乗った飛行機が軽快な音を立てて爆発する。彼女はちっと舌打ちをして、
「宇宙のいいところはね、…、それは今日と明日の区別が無いところね」
「へえ」
「人間や地上を基準にしていたら、ともすれば私たちは人間的だったり、原始的なものを前にして、それが人間にとって納得しやすいという理由
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