逃避行/青井
 
けるその最中にも
人は老いて物は古びる
そうしてあらゆる命はいつか果てて
すべてのものはやがて滅ぶ
言葉にすればたったそれだけのこと
その意味するところは至極シンプルだが
そこで生きるということの奥行きは
常闇のように底知れない
面白い本を読むことも
仕事に精を出すことも
何かを深く愛することも
煎じつめればただの逃避行
いったいどこへ向かっているのか
はたしてどこまで逃げればいいのかと
分からないふりはしているが
本当はどうしようもなく気付いている
生きることを選んだからには
この世界のどこにも
逃げ場などあり得ないことを

戻る   Point(3)