逃避行/青井
 


美しい夕暮れに見とれることも
大きな声で歌うことも
誰かに恋をすることも
煎じつめれば逃避行
どこへ逃げているのか分からないが
何から逃げているのかはよく分かる
それはひたひたと静かに背後から忍び寄り
いつとも知れず誰かの喉元をかき切るだろう
それは今この瞬間もどこかで起こっていること
そして次の瞬間に起きる場所がここでないとも
僕の愛する誰かの首すじでもないとも限らない
明けない夜も止まない雨もないが
朝が来るまで青空が顔を出すまで
無事でいられる保証はどこにもないから
今はただわき目もふらずに逃げるのだ
そう自分に言い聞かせながら
息せききって走り続ける
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