一度食べかけて、また吐く/由比良 倖
 
 眠れない日が何日か続いて、僕の、痛みの塔、が視界の右端に、反対側には眠気。今朝、僕の体がひとりで勝手に歩いていって、切符売り場をちらりと見ることもせず、学校とは反対行きのバスに乗ってしまった。仕方なく、僕はバス乗り場のベンチで、そこの柱に書かれた落書き「聡明なる天使が・・」その先は引っかかれたようになっていて、読めなく、後ろで、かしゃかしゃ聞こえるので、振り向くと中学生くらいの少年が、胸の前をかき合わせるようにして、憂鬱そうな顔でロックを聴いていた。雪のように真っ白な、というより、蒼白な面持ちで、僕と目が合うと、少し驚いたように身を引いた。僕は、笑いかけた唇をもとに戻して、「気分が悪い」と呟いた
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