とある一日/ただのみきや
*吹雪
また寝過ごした
慌ただしく時間を折りたたんで
結露の向こう 誰かが叩く
風のふりして泣いている
葉牡丹
あまりに冷たい断り文句じゃないか
あまりに見事な葉牡丹じゃないか
《――わが空想の名において》
ポケットから青虫ひとつかみ
そっと置き去る
**吹雪
震えて撓(たわ)む木々
逃げ去る雪の群れ
光はなく闇もない真昼ましてや情事など
時は平静 澱みもせずに
ベンツ
思わせぶりのやさしい笑顔で
あれこれ攻めさせて
熱く語らせておいて
「いらないわ」――ベンツが止まった家
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