幸せな光景/そらの珊瑚
 
透明な水槽の底
沈んで横たわる
短くなった鉛筆たち

もう手に持てないほど
小さくなってしまったから
持ち主たちが
ここに放したのだ

その体を貫く芯が
ほんのわずかになったのは
命を全うした証し

 もう何も記さない
 削られない
 尖らない
 それでも
 名前も知らないあの人の
 指の体温を
 時折思い出すことがある

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