ことばを灯す/たま
 
十二月、空はひくい。
落ち葉の季節も過ぎた。
竹箒を立てたようなケヤキの並木がつづく国道。
鳥の巣が傾いたまま、
ケヤキの梢にひっかかっている。
いつ落ちてもふしぎではない、そんな気がする。
あれは、不器用なキジバトの巣。

介護ホームの母を訪ねる。
母の部屋の扉の鍵は、十円玉一枚あれば開く。
まるで幼稚園児の隠れ家みたいだった。
北の窓がひとつ、
ベッドがひとつ、
洗面台がひとつ、
テレビと、簡易トイレと、
車椅子がひとつ、
室温二十一度のエアコンと、
天井のあかりがひとつ、消えたまま、
母はひとり、
午後の部屋に横たわる。

 みぞれ、ふってるわ。

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