夜の森/星丘涙
 
るのが分かる
耳をふさぎながら出口を探すが
闇にさえぎられ方向感覚は失っている
妻の顔が脳裏を横切る
もう駄目なのかもしれないと 
泥の中に座り込み諦めかけ
恐怖と悲しさの中
気を失ってしまった




どれくらい時間がたったのだろう
小鳥のさえずりに目を覚ました
頬に朝露がしたたっている
朝日がまぶしい
体中泥だらけで あちこち擦りむいていた
どうやら私は助かったらしい
近くの農道を小学生達が並んで登校するのが見える
安堵のため息をつきタバコに火をつけて
家に向かった
妻が台所で食卓の用意をしていた

「あなた、おかえりなさい」

私は風呂に入り仕事に行く用意をした
味噌汁がうまかった
妻がこちらを見て微笑んでいた


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