釦/為平 澪
ち。
いつか、役に立ちたいと思いながら、
消えていった女たちの、俯いた顔が縁側に浮かぶ。
胸の釦に通された針と糸の行方
固く留められていた結び目と糸の解れ
転がっていった釦たち
要らなくなった釦たち
どれ一つとして同じものがないボタンホールが見せた景色
断ち切らねばならなかったもの。
その隙間を埋める術もなく、こぼれおちていったもの。
先立たれた者や失った者の声や骨を拾い集めるように、
私もまた、誰かの釦を見つけては、自分の小箱に入れて、蓋を閉めるのか。
座り込んでいた時間が
縫われるよう覆われて
陽射しはどんどん弱くなり
あやふやな手つきの中で
釦が一つ、転げて落ちる
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