名乗らぬ海の心音を聴く/もっぷ
そこを避けて着水しなくては/かなって夕日
の沈む頃に合わせるかのように操縦士だけの
小型機が落ちた/燃料は使い切るだけを飛行
したはずなのに静かに知られずに海で燃えて
/夜空への祈りのように最後、一瞬あざやか
に煌いたのち命を終える/操縦士もロザリオ
の胸元を気にしながら――それを現世での思
い出として次の世に(ゆくのだろうか)/そ
こ、彼が気にしていた多島海域は何事もなか
ったように翌朝を迎え一つの島の夏のこども
たちが石ころの道でロザリオを拾う/拾った
彼らには諍いや独占欲の概念がなく年上の子
から順番に十字架を掌で確かめる「何か聴こ
える」「何か聴こえる」手から手を
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