褐色の濃いあたりに/深水遊脚
 
出していることに気づいていた。ちらりと横をみると、先ほどとくらべて彼女が明らかに前屈みになっていた。目は食い入るようにタブレットを追い、指は忙しく叩くような動作を繰り返していた。

「お手洗いをお借りします」

マスターに伝えて席を離れた。彼女のしぐさをみた途端に、自分でも理解不能なくらいに動揺してしまったのだ。尿意も便意もなく入ったお手洗いで、大きな鏡に映る自分の顔をみていた。彼女に関係あるかわからないのに、私の脳裏に浮かんで離れないのは、私の言葉が原因でインターネットの上から、あるいはこの世から、消え去ったかもしれない人たちのことだった。倉橋さんはなにか問題を抱えているかもしれない。抱
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