あんこう鍋/……とある蛙
弁慶が大口開けて鍋の中
曇天月隠す湯気あんこうの鍋
煮凝りやぷるんとする皿皮の裏
舌鼓おやじに高笑いでも無く福笑い
角の老舗の佇まい
ガラス戸を開けると顔を出す
ぬっと顔出す親父の顔は
のっぺりとした大口で
舌なめずりしてご挨拶
「いらっしゃいませ」
「ご予約のお客様ですか」
二階の座敷に案内され
との予想に反して階の下
打ちっ放しのコンクリに
水が打たれて吊されて
それから揃う七つ道具
(閑話休題)
自分の顔が鍋から覗く
悪食を喰らう悪食の肌は艶やかで
湯気とともに立ちこめる
ゲヒな笑いと酒の香に
今年もそろそろ仕舞い支度
などと言わせるコートの襟
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