しろい苔/草野春心
 


  父や母 子や孫 兄や弟 姉や妹
  と書いて もう私にはわからなくなった
  これから一生かけて 目の前の壁だけをみていたい
  しろい苔がいつまでも魂の表皮から剥がれそうにないから
  やがて甘い音楽が愛するひとの呼吸のように耳に転げて
  もう 私にはわからなくなった 望みをもつことの
  意味も意義も 理由も理想も


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