道化中毒/志田陸
 
ひっちゃぶくように
この平凡な喧騒を突き進む
ばれないように 人知れず
重心をちょびっとずつ傾けていく
向かいつつ 逃げていくのだ
白々しく光を浴びせてくる蛍光灯を叩き割る音が後頭部に響く
パチッ...っと震える手で明かりを消した

本来のそれであると認識しているその人格は
これまでも、この先も誰の興味もひかず
男自身からも忘れ去られ
シーツに染み込んだただのDNAのように
消えていくのだろう
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