泥仕合/藤鈴呼
 

カラカラの うずまき
音が出る直前に
ジュワッと上がる 湯気ばかりを
連想する

カピカピの クチビルが
パキパキと
今にも ヒビワレテ しまいそうだけれども

ぬめっとした 舌で
軽く 拭う

そうすると 泥のように眠った
昼間の悪夢をも
払拭してくれそうな

鈍色の雑巾を 絞る瞬間を
思い出せる

そのまま もう少しだけ 歩を進める
風は 吹かないから

少なくとも 部屋の中では
吹き溜まりの 空気感だけが
ゆっくりと 存在していて

揺蕩う流れなど
まるで なかったかのように
小さな角度で 頬をくすぐる

茶色の 輪っか
犬の
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