鈍色の匙/ただのみきや
日差しは入り江を満たす穏やかな波のよう
ちいさな冬も丸くなった午後の和毛のぬくもりに
鉢植えの場所を移しながら
――古い音楽が悪ふざけ
週日開きっぱなしのトランクをむやみに閉め隅へ蹴る
――はみ出した雑事のヒラヒラ
なんら重要ではないひと時(わたしの詩のよう)
結び目が解けて流出する
思考せず感覚する海の生物のように
追い求める幸福はなく
探し求める楽園もない
記憶には日没があるだけだ鮮やかに
閉ざされた未来へのひとすじの光もない永劫の
過剰に刺激を求めていた縋るためではなく溺れるために
さし伸べられる幻影の輝きに青白い頬を高揚させながら
同じことをし
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