夜の光/草野春心
 


  対岸の河辺で
  鈍色に翳った立体に燈(あかり)が実る
  ふるくからの草木が影をつかまえ
  水面へうつくしい銀の光を濯(そそ)いでいる


  玉模様の白さら 橋の辺り 靄をはこぶ
  鼻つらに挑んでくる切なさ畏(おそ)ろしさのしずく
  疼く昏さの煙が あちこちで開いていく傘
  何を避けるためか わたしはしらない

  
  そして 魂はよごれていく
  煌めきは 在ることに負わされた傷だから
  今、光のような夜闇に 指先まで包まれた
  あなたの声をわたしにもう一度だけ聞かせて



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