パッチワーク/Lucy
 
び去って行く街
山間の村を飲んだ湖が写す 分厚い夏空
草だらけのアトリエの庭に
揺れていたガウラ

あなたと眺めた
濁った雲にかかる濃い色の虹
初めてのような強い色だね
もう一生見ることはないのかもしれない
それから雲の切れ間に姿を見せた
大きな満月
六十八年ぶりのタイミングで
地球へ接近したという
まるで祝福してくれるみたいだねと
言いながら 心では
違うことを思っていた
これは予兆
美しすぎて
私たちには似合わな過ぎて

座り込んで
終わった欠片を拾い集めた
一枚一枚並べてみた
細い糸で
繋ぎ合わせた
その糸はすぐに古び
摩り減って
そこから綻びてしまうので
又違う切れ端をあてがって縫い繋ぐ
めちゃくちゃな模様になれ
でたらめな思い出になれ

そんな作業を
もう百年も続けている
もう少し
あと一枚で あなたのための
ベッドカヴァーが出来上がるでしょう



 


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