扉の向こう側/小川麻由美
 
私は、いかにも農家の家と言える灰色の瓦屋根の実家にいる。
庭に出てみると、白壁の土蔵の蔦に絡まった美しい男性がいた。
死んでいると思いきや、ビクッと動き私は驚いた。
その動きたるや、金粉を撒くような美しさである。
なんでも、突然私の兄が現れたと父は言うのだ。
その兄は、何がしかの障がいがあり、父母は途方に暮れていた。
私はその兄を気に入りもっと兄の事を知りたくなった…
聖セバスチャンの耳元で、兄の事を聞いてみるのも得策かもしれないと思い、
それが可能なのかさえもわからないが、そうしてみたいという程、私は混乱していた。

庭の横の扉の向こうが気になり開いてみると
そこ
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