ラブレターは夜に書く/愛心
貴方はもう眠っているんだろう。
そのかんばせに疲労と充足感をたたえて
閉じた瞼に縁取られるのは
かさついた睫毛か湿った青紫の隈か その両方か。
声を聞きたい。と
一人、ぽつりと呟いて
無機質に光る液晶を消した。
蝋燭の火の色をした灯りの下で
便箋の上に 下手な字を書き連ねていく。
読み返すつもりもなく。
刻むように綴るのは
燃えるような愛の言葉ばかり。
あの人に見せることはない。
見せられる筈がない。
便箋の可愛らしい柄に相反するように
不恰好に並んだ、わたしの言葉は、想いは
熱く、近づくだけでも恐れをなす
触れてしまえば火傷で済むものか。
その身を、心を、嘗めるように覆い
灰にしても、なお、堪らず
止められない。
溜め込めば息が出来ず
吐き出せば傷つけて
どうしようもなく。
知られたくない。
誰にも見せない。
このまま、隠しておくから、だから。
「 」
飲み込んだその言葉は
星のように燃えていて
その小さく瞬く熱を
隠すように涙で消した。
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