ある朝こぼれ/ただのみきや
 
舌先で像を結ばない
時代の陰りの不安漠然とした
――漏出か
灰に灰よりも濃く灰を溶き混ぜた
ような雲
 も 時折 
    裂 け
息苦しい断絶の青さ遠くかもめのように過る
無垢のまま去って往くものたちよ
その残光のフィラメントを追いかけて瞳は乾き
強張る肉体に魂は締めあげられる


人として生きる夢から覚めた老木は
虚空を掻き毟るその枝の動きすら風任せであったことを知る
見つめ 欹て 感じながら
受けることしか 全てを
拒みつつも受け入れることしか
戸惑い 
――静かな葉脈の水音 
諦め
――まだ固い蕾の兆し
祈りのように触れない救済の匂い
ただ在っ
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